てくてく

昔の派遣先の職場が実に暇なところで、何もすることがない日がよくあった。

ちょうどその頃、「耳を肥やそうブーム」の真っ最中で、わたしはいろんな音を聞き分けるのに必死になっていた。

耳をすませると、職場はいろんな音がした。
電話、ファックスの送受信、コピー機、ファイルを閉じる音、ドアの開閉、人の声…
いろんな音を必死に聞いて、耳を肥やすのに必死になっていた。

そんな中、面白かったのは足音。
スリッパのパタパタという音は全員違う。
スリッパの種類で変わるのは当然。どうやら体重やからだの重心のかけ方でも違ってくるようだ。
みんなそれぞれのリズムを持って歩いていた。
すべて同じリズムになるわけもなくバラバラな足音だったけれども、ふと全体を聞いてみると妙に混じりあっていて、不快感はなかった。


今思うと、そんなことせずに上司に仕事をもらいにいけばよかったと後悔している。